2024.08.07更新日

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医学部受験の社会で何を選択するべきか?ポイントを解説

医学部受験において、社会からどの科目を選択するかはなかなか悩ましい問題です。ここで考えなければならないのは、医学部の入試における社会の重要度と、社会の対策にどのぐらい時間と労力を割けるかではないでしょうか。その観点から、医学部受験の社会ではどの科目を選択するべきか、また、選択した科目はどうやって勉強するべきかを考えていきましょう。

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1.医学部受験における地歴公民の位置づけとは?

国公立大学の医学部を受験する場合、社会(地歴公民)が必要なのは大学入学共通テストだけです。地歴公民は日本史探求(日本史B)、世界史探求(世界史B)、地理探求(地理B)、公共倫理、公共政治経済の5科目から1科目選択する形式になります。

新課程に入って選択科目が複雑になりましたが、おすすめは上記で示した5科目から一つを選ぶことです。なぜなら、「地理総合(地理A)・歴史総合・公共」の一科目受験では50校ある医学部のうち19校しか受験できないからです。受験校に選択肢を広げるためにも上記の5科目から一科目選択して対策を進めましょう。

どのようなパターンであれ、国公立大学の医学部受験において地歴公民の位置づけはあまり高くありません。大学入学共通テストと大学個別の選抜試験を合わせて考えると、主要大学の医学部入試では、社会の配点がわずか5%程度というところが多いです。わずか5%の配点しかないということで、「社会の対策は理系科目の後で」と考える受験生も少なくないのではないでしょう。確かに、配点の低い社会より、英語、理科、数学に多くの時間を割く方が、医学部合格の可能性は高まるでしょう。しかし、医学部の合格ラインは相当に高く、大学入学共通テストでは最低でも80点以上の総得点率がないと厳しいとされています。たかが5%といえど、もし社会科目が0点の場合は満点が95%という状態で受験がスタートすることになり、合格のハードルは更に高くなります。ですから、配点は低い社会ですが、可能な限り得点しておくことに越したことはありません。

ただし、地歴公民の得点を上げるために長時間をかけるのも本末転倒でしょう。入試本番までの時間が限られている以上、なるべく英語や理科、数学などの配点の高い科目に注力すべきです。配点の低い地歴公民は、短時間で高得点を狙える科目を選ぶのがベストな選択だといえるでしょう。

2.医学部受験の地歴公民は何を選択したほうがいい?

今述べたように、地歴公民からどの科目を選ぶかは、短時間で高得点を狙える効率性をもとに考えたいところです。とはいえ、どの科目が効率良く得点を伸ばせるかは人によって違います。

2-1.公共倫理、公共政治経済

新課程により、「倫理・政治経済」は「公共倫理、公共政治経済」に名前が代わりました。しかし、旧課程と変わらず最短時間で得点アップが狙える科目は公共政治経済がベストかもしれません。

倫理は、哲学や思想、宗教などの我々にも関連の深い項目が多いため、すでに持っている知識をバックグラウンドに理解を深めやすいというメリットがあります。しかし、改めて学習しなければならない知識も少なくありませんし、公共倫理として受験する際に、現代社会要素の強い公共とのかみ合わせがあまりよくないと考えられるため強くはおすすめできません。

一方の政治経済は、堅苦しい話で興味が持てないかもしれません。しかし、公共政治経済として受験する際は、両科目とも現代社会の要素を含むため科目のかみ合わせがいいと考えられます。2024年度からの新課程であるためあくまで予想ですが、地歴公民では公共政治経済がコスパよく得点を取れる科目だと予想できます。

倫理・政治経済の勉強の仕方としては、3年生の夏までに必要な知識をひと通りインプットして、秋からは大学入学共通テスト対策として、市販の問題集や過去問による演習がおすすめです。

具体的には、まず、受験で必要な範囲を網羅的に解説している参考書を選び、それを何度か繰り返して読んで知識をインプットします。一度で覚えようとせず、何度か読んでいるうちに自然と覚えてしまうのが理想です。読むだけなら、スキマ時間にもできるでしょう。理系科目の休憩の合間でもいいので、これを遅くとも秋までに終えることを目標にしましょう。

可能な人はもっと早くからでもよいですが、遅くとも秋からはアウトプットの練習も行います。ただし、大学入学共通テストはまだ始まって間もないため、十分な量の過去問がありません。市販の問題集やセンター試験の過去問で補いましょう。

2-2.世界史探求

世界史は、先ほども述べたように暗記量が多いのが特徴です。地歴公民の全科目で最大の暗記量と言ってもよいでしょう。そのわりには、受験対策に適した教材が少ない印象です。よって、医学部受験のためにゼロから始めるのにはあまりおすすめできません。

しかし、履修する高校が多いため、学校独自の教材が充実しているところもあります。もちろん世界史が好きという人なら、多少の暗記量はハードルにならないでしょう。

なお、従来のセンター試験では、基本的な知識、時代の流れ、歴史的事件の起きた地理などを中心に問われていました。基本を押さえておけばある程度得点できたはずです。ところが、大学入学共通テストでは、こうした基本事項の知識に加え、資料や図表などを使った考察問題が増えています。時代と地域の相関関係をしっかり頭に入れておくことが大切です。

世界史の具体的な勉強のやり方ですが、夏までに基本知識のインプットは終えておきたいところです。暗記量が多い分、倫理・政治経済よりも時間と労力がかかることが予想されますが、世界史全体の流れをカバーした参考書を1冊選び、それを繰り返して徹底的にインプットしましょう。その際、人物や出来事単体で覚えるのではなく、時代の流れや地域のつながりを意識して覚えるのがおすすめです。流れのなかで覚える方が、人名や用語も覚えやすいでしょう。

2-3.日本史探求

日本史も暗記の多い科目です。ただ、既知の人名や地名、漢字が多いため、なじみのないカタカナの並ぶ世界史よりとっつきやすいと感じる人が多いのではないでしょうか。

なお、従来のセンター試験では基本知識の確認が中心でしたが、大学入学共通テストでは考えさせる問題が増えています。一問一答式の対策では対応の難しい、問題文の論理を踏まえて解答するタイプの問題です。また、資料や図表などを使った読解問題では、知識を資料等と組み合わせないと正解できない問題も増えています。

大学入学共通テストの日本史のこのような特徴を踏まえると、暗記中心ではなく、やはり世界史と同様、縦(時代)と横(地域)のつながりを意識しつつ勉強することが大切です。時代の相違や政治や地歴公民の関係を押さえつつ、大局的な視点を養うことが日本史での高得点につながります。

具体的な勉強法は、夏までの基本知識インプットと、秋以降の実践的な演習を繰り返しです。詰め込みでは記憶に定着しないので、何周も繰り返してインプットしたものを着実に長期記憶にするように意識してください。

長期記憶はエピソードと関連して形成されます。人物や出来事単体ではなく、「いつ、誰が、何をきっかけに、何を目的に何をしたか」と流れのなかで覚えるようにすると記憶に定着しやすくなるのでおすすめです。

2-4.地理探求

暗記量がモノを言う世界史や日本史と異なり、地理では思考力や理解力が必要な問題が出題されています。論理的な思考が求められる数学の解法には多くの医学部志望の受験生が慣れているため、世界史や日本史よりも地理の勉強が楽しいという人が少なくありません。また、世界史や日本史と比べて暗記量もそこまで多くないので、地歴公民にかける時間と労力をなるべく少なくしたい受験生にもぴったりでしょう。

ただし、対策がしにくいと感じる受験生もいます。知識自体を問うだけでなく、統計などから推論や考察を求められる問題が多いため、単に知識を覚えたら完璧という科目ではないからです。完璧を目指せば、対策にはいくらでも時間がかかります。大学入学共通テストで7~8割取れれば良しとするなら、比較的短時間で対策できる科目ですが、9割以上など高得点を狙うには、地歴公民の他の分野より圧倒的に有利とまでは言えません。

基本的な勉強方法は他の科目と同様です。高校3年生の夏までに基本知識のインプットを完了し、秋以降は実践的な演習に力を入れます。学校で履修しているのであれば、授業も活用して受験に必要な習得すべき範囲を早めに把握しておきましょう。そうしないと、膨大な数値やデータをひたすら覚えるような無駄をしてしまいかねないからです。

また、地理は教科書や参考書を読むだけより、地図帳を使って自分で実際に書き込みながら覚えると理解が早いです。問題演習は大学入学共通テストやセンター試験の過去問を一定数やることで対応できますが、単に問題を解くだけでなく、答え合わせの際に背景知識など関連事項まで押さえておきましょう。そして、新たな知識は地図帳にどんどん書き込んでいきます。こうすることで、未知や未整理の事項がすっきりまとまり、理解が深まりやすくなるでしょう。

2-5.公共

受験できる医学部が限られるため、公共を万人におすすめすることはできません。しかし、公共で受験可能な大学を志望する人にとっては、他の科目より暗記量が少なく、得点力を伸ばしやすいのがメリットです。

公共は時事問題が多いため、対策がしづらく高得点が計算しにくいと言われます。確かに他の科目と違って、公共の平均点は低く、また年度ごとの平均点にも差があります。

ただ、世界史や日本史のように、ゼロから覚えなければならない未知の事柄は少ないはずです。たとえば専門用語でも、詳しい内容まで解説できないとしても、ほとんどの受験生は見たり聞いたりしたことがあるでしょう。ある程度は馴染みのある項目を学ぶため、ゼロからの習得を目指す科目より効率が良いのが公共のメリットです。

時事問題が多いため、過去問の演習のみでは十分な対策にならないのがデメリットですが、教科書の内容をマスターするだけで6~7割は得点できるようになります。時事問題に関しては、比較的新しく刊行された参考書を用いながら、新聞等でニュースに触れるようにするとよいでしょう。

3.まとめ

医学部受験において、国公立大学を志望する場合は、地歴公民が必要なのは大学入学共通テストのみです。それゆえ、大学入学共通テストと大学個別の試験の全科目の配点を見ると、主要大学では軒並み地歴公民の配点が5%前後と低くなっています。したがって、対策にかける時間はなるべく短く、かつ、得点力を伸ばしやすい科目を選ぶことが大切です。

しかし、得点を伸ばしやすい科目は人それぞれあり、みんなにおすすめできる科目は存在しません。たとえ少数派であっても自分が勉強しやすいと感じる科目を選びましょう。他人の意見に振り回されず、自分のペースを維持するのが医学部合格に繋がる第一歩です。ぜひ科目選択を大切にしてくださいね。
(情報は2024年8月現在。)

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