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医学部受験における理科選択の化学とは?
医学部受験には理科が必要ですが、理科のうち特に化学が重視されることが多いです。というのも、2科目選択の理科のうち化学を必須とする大学が多く、実際、試験でも重視されています。
ただ、他の科目に比べると化学は対策がしやすい科目と言われることも多いです。勉強した分だけ結果につながるため、努力し甲斐があります。逆に、化学の対策にどれだけ力を入れるかによって、受験の結果が大きく左右されると言ってもよいでしょう。
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1.医学部受験における理科選択の化学とは?
医学部受験での化学には、理論化学、無機化学、それに有機化学という3つの分野があります。これらの分野は相互に連関しているというより、むしろ個別に学ぶべき必要がある分野と言ってよいでしょう。そのため、3つの異なる科目を勉強しなければならないと思ってしまう人も少なくありません。
ところが、理論化学、無機化学、有機化学がそれぞれ独立しているからこそ、医学部受験では対策しやすいとも言えます。なぜなら、基礎から順を追って知識を積み上げていかなければならない科目と違って、化学の場合、理論化学、無機化学、有機化学の好きな分野を一つずつ学ぶことができるからです。
例えば数学の場合、1年次の基礎からの積み上げが受験直前まで大きく影響します。三角関数や数列を勉強せずに微分積分の力だけ伸ばすのは難しいでしょう。ところが、化学の場合は、それぞれが独立した分野であるため、どこからでも対策が可能で、一つの分野を入試レベルに高めるまでに数学のように時間もかかりません。したがって、現時点で化学に苦手意識がある人でも、しっかり勉強すれば近い将来に高得点を取ることも可能です。
では、理論化学、無機化学、有機化学のそれぞれについて、医学部受験のために必要なことを確認しておきましょう。
1-1.理論化学
理論化学は、化学反応の原理や元素の知識など理論的なことを勉強する分野です。化学の3分野は相互の関連性が薄いとはいえ、理論化学は化学の基礎的な分野ですので、それなりにしっかり学んでおく必要があります。具体的には、基礎知識となる原子、イオン構造、周期表などから始め、熱化学や酸化還元、電気分解、化学平衡と教科書に記載されている順番で学習していきましょう。
理論化学の単元内で学習する内容に関しては、それぞれがそれぞれの知識の前提になっていることも多いため、相互に関連付けて勉強する必要があります。酸化還元反応について知らないと電池・電気分解について理解できません。また、化学平衡について考えるには、酸と塩基や熱化学の知識なしには不可能です。
ですので、理論化学に関しては化学の3つの分野のなかでも、基礎からしっかり知識を固めていく必要があります。逆に、理論化学の基礎をしっかり身につけることで、大学入学共通テストでも大学が行う選抜試験でも高得点を狙えるようになるはずです。一度しっかり基礎知識を理解すれば、計算問題中心になるため得点しやすい分野とも言えるでしょう。
1-2.無機化学
無機化学とは無機化合物(炭素を除く)の性質を学ぶ分野です。具体的には、非金属元素、典型元素、遷移元素などを扱います。周期表に物質がテーマとして掲載されており、それをベースに元素の反応等の知識を身につけていくべき内容です。ハロゲン化合物についてなら、塩素やフッ素、臭素などの元素の特徴を踏まえて、いずれの物質とどのように反応するかを学んでいきます。
そのため、元素の種類やその反応の流れなど暗記量が多いのが無機化学の特徴です。また、公式は少ないものの暗記していることを前提とした計算問題も出題されます。計算問題は基本的に配点が高いので、暗記事項を忘れていたせいで計算問題を落とすことの無いように基礎固めを大切にしましょう。
1-3.有機化学
有機化学とは、炭素を中心に共有結合した有機化合物について学ぶ分野です。有機化合物の分類やそれぞれの特徴、脂肪族炭化水素、脂肪族化合物、芳香族化合物などについて学びます。具体的には、脂肪族炭化水素はアルキン、アルケン、アルカンの定義、脂肪族化合物はケロンやアルコール、芳香族化合物はベンゼン環を持つ化合物などです。
有機化学の分野で中心となるのは、反応から有機物を特定する構造決定の問題です。官能基のそれぞれの特徴をしっかり理解したうえで、構造を絞り込みどんな有機物なのか特定していくという過程をたどります。それにはいくつかのパターンがあるため、志望校だけでなく共通テストや医学部の過去問に挑戦し、医学部で出題される大まかな傾向を把握しておくとよいでしょう。
2.医学部受験の化学で必要な能力は?
医学部受験の化学で必要となる具体的な内容は上記のとおりですが、ここからは入試化学の問題を解くのに必要な能力について見ていきます。
2-1.問題を把握する能力
医学部の化学には問題把握能力が不可欠です。理論科学は、解答欄に記載しない数値を計算することが多々あります。そのため、すべての値を計算していると試験時間をオーバーしてしまうのです。ですから、数値をある程度考えながら計算方針を立てる癖を受験本番までに身に付けておく必要があります。
また柔軟な思考力が求められるのが有機化学の分野です。物質や現象の動きからどんな物質なのかを特定する構造決定の問題は、暗記力などでは対応できない思考力こそが問われます。また、人によってはパズルのようでおもしろいと感じられるように、ひらめきで解答スピードが大きく変わるジャンルです。
2-2.計算能力
化学にも計算能力が必要です。「mol」に数値を換算する問題や気体の濃度や体積を計算する問題など、理論化学ではこの能力が特に重視されます。1問目で計算ミスをすると、以降の問題も全部間違えることになるので注意が必要です。また、理論科学では単位を気にして解かなければいけないことが多いです。計算は合っていたのに最後の単位が違うということがないように気をつけましょう。
とはいえ、数学や物理のように複雑な計算ではなく、正確、かつ、スピーディーに計算できれば対応できます。計算自体は単純な足し算・掛け算のみなので演習を重ねてミスがなくなるように特訓しましょう。
2-3.暗記事項の定着
化学の分野のなかには暗記力を問われるものがあります。特に暗記量が多い無機化学では、暗記事項をしっかり定着させることが必要です。物質やその性質などについて覚えていなければ問題の意味さえわからないことになるので、暗記すべき事項は正確に暗記しておきましょう。
3.勉強法とは?
まず、理論化学、無機化学、有機化学の各分野について、具体的な勉強法を確認しておきましょう。
3-1. 理論科学
理論化学については、何より用語やその定義などの知識をしっかり覚えることが大切です。大学入学共通テストや私立大学の入試では細かい正誤問題がよく出題されます。
なお、原子量や物質量などの用語について、単に暗記するだけでなく、人に説明できるぐらいしっかり理解しておく必要があります。理解があやふやだと、のちに学習する内容の理解にも支障をきたすので注意が必要です。
また、理論化学では計算問題がよく出ます。それほど高度で複雑な計算能力は求められませんが、ケアレスミスは絶対に防がなければなりません。計算ミスが多い人の特徴として、数値が伴う単位を見落としがちということが挙げられます。単位の違う数値同士を足し算・引き算していたり、右辺と左辺で単位が違うことに気づいていなかったりなど、問題をしっかり把握し、正しい計算過程をたどるのならば未然に防げるミスが多いです。「どうしてこうなるのか?」と常に意識しながら計算しましょう。
3-2. 無機化学
無機化学は、酸塩基反応と酸化還元反応(中和、沈殿、遊離)が中心です。暗記する量が多くてたいへんですが、暗記だけに頼るのも危険なので注意してください。化学反応式は、単に暗記するだけでなく、なぜそのような式になるのか理屈を理解している必要があるからです。その理解があれば知識を応用できるようになり、さまざまな化学反応式を作れるようになります。
また、無機化学では実験によって得られる化合物の色などもよく問われます。実際に自分の手で実験するのならば記憶に鮮明に残りやすいですが、文章だけではなかなか理解しにくい点です。なるべく資料集や図説を活用し、視覚的にも暗記するように努めましょう。
3-3. 有機化学
有機化学にもさまざまな化合物が登場しますが、それらをすべて暗記しようと思っても対応しきれないほど無数に登場します。したがって、なぜそのような名前になるのか基本となるルールを理解するようにしましょう。それが理解できれば、新しい物質に出会った時もなぜそんな名前なのかが理解しやすくなります。
また、有機化学では異性体の構造決定の問題も頻出です。自分で書いてみて、異性体の書き方を理解しておきましょう。
3-4. そのほかに注意する点
化学の各分野の勉強法は以上ですが、次に注意すべきことをいくつか挙げます。
まず、高校1~2年生のうちは無理に背伸びしないことです。理論化学の勉強に集中しましょう。なぜなら、無機化学などの暗記物は早いうちから闇雲に覚えても数か月後には忘れてしまいます。また、無機化学も有機化学も問題数自体が少ないため、もう少し後から始めても十分な演習ができます。
一方、理論化学から出題される範囲は膨大です。ざっと目を通すだけでも時間がかかりますから、1~2年生のうちからコツコツ取り組んだ方がよいでしょう。また、化学で必要な計算はそれほど高度ではないので、1年生から始めても無理なく学習が進められます。時間が経つと忘れる暗記物より、持続的な頑張りが確実な力となる計算力に力を入れた方がよいでしょう。理論化学がだいたいできるようになったら、知識を覚えることにも力を注ぎましょう。
無機化学は知識がしっかり定着していれば、解答可能な問題が多いです。暗記量が多くたいへんな面はありますが、受験本番では緊張していても解ける問題として助けてくれるでしょう。決して怠ることなく対策をしましょう。
化学の参考書や問題集は各出版社から非常に多く出ています。自分のレベルや好みに合わせて問題集が見つかるのが良い点ですが、ある程度慣れてきたら、お気に入りの1冊だけでなくさまざまな問題集に当たることも大切です。
化学の場合、「量より質」というより「質より量」という言葉が適しています。もちろん「なぜそうなるのか?」という理屈は大切ですが、いったんそれを理解したら、いろんな問題にどんどん取り組み量をこなしていきましょう。公式を覚えることも、計算力をたかめることも、演習の回数で解決できることです。なので、ある程度知識のインプットが終わったらひたすら演習しましょう。
4.まとめ
化学は多くの医学部受験生が選ぶ科目ですが、決して簡単な科目であるというわけではありません。計算が途中まで合っていても、最終的な答えが違っていたら部分点すらもらえないことが多く、正確、かつ、スピーディーな計算能力が要求されます。加えて、暗記量が多いだけでなく、単なる暗記では対応しきれず、理屈をしっかり理解しているかどうかが重要になる科目です。
しかし、化学の各分野はそれぞれ独立して勉強しやすく、やればやるだけ成果につながりやすい科目でもあります。自力では難しいと感じた時は、塾や予備校などの力も利用しつつ、合格を目指して効率の良い学習を心がけてください。
(情報は2024年8月現在。)
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